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武士と書いて「もののふ」と読む

内容はヲタクトークしかありません。 ナチュラルにネタバレするのでダメな人注意!!

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37歳になってもだもだしてる火緑の話

↓長いよ↓

 火緑が37歳くらいのお話です。
 
おおまかな説明。
高校から付き合っていたが、お互いの将来のことを考えて大学2年で別れました。
別れを切り出したのは緑間。火神はしぶしぶ承諾しました。
 
お互い、きちんとお嫁さんをもらって結婚しています。
息子が1人ずついます。
火神君の息子の名前は、来我(らいが)
緑間君の息子の名前は、真大(まひろ)
2人とも小学2年生です。
 
いろいろ結婚してる人とか、こどもの話とかもしますので
オリジナル色が濃いのでそういうの苦手な人はバックオーライ宜しくお願いします。
 
 
 
 
 
「父さん遊園地行きたい!」
 
日本に帰省中、火神は息子の来我に頼まれて遊園地へ遊びにきた
さすがに夏休みだけあって園内は人で溢れていた
暑いのには慣れているがわりと堪える
 
「父さん!次、あれ!あのコースター乗ろう!!」
「わかったわかった」
はしゃぐ来我にひっぱられてやれやれといった感じで列に並ぶ
「来我、のど渇いてないか?来我?どうした?」
そんな中、来我が一点を見つめて動かない
「父さん、あの子…」
指を刺す方向には、1人のこどもが周りを見回していた
通る大人の顔を見ては別の人の顔を見ている
「ありゃ完全に迷子だな…って、おい来我!」
火神が言葉を言い終わる前に迷子に向って走る来我
「どうしたの?」
「…え…」
いきなり声かけられたせいか相手の子は戸惑っている
「どうした?家族とはぐれたのか?」
「っ!?」
あとから火神が声をかけるがすごく驚いている
一般人より身長の高い火神だ驚かれてもおかしくはない
火神はあわてて屈んで目線をあわせる
「あ、ごめんなビックリさせ…て…」
屈んでよく見れば随分かわいい顔が飛び込んでくる
大きい目は不安気で、瞬きする度に長い睫毛が音をたてる
 
(どっかで見たことあるような気がする…)
 
「えーと…お嬢ちゃん、名前は?」
「…あの…みどり…ま…」
聞いたら驚きの名前が返ってきた
火神にとっては忘れるはずもない名前だ
だが、もっと驚く言葉が放たれた
「…あの…ぼく…」
 
「ぼく」
 
女の子と思って声をかけた火神だったが正体は男の子である
 
「えっ、あっ、ごめん!ごめんな!男の子か!ははっ…」
「父さん…」
呆れたように来我に背中を突付かれる
「えーと…あのさ…お父さんの名前って真太郎か?」
「え…?はい…そうです…」
火神が自分の親の名前を知ってたのにびっくりしたのか緑間と名乗った少年はまた大きく目を開く
「そっか…ちょっと待ってろ」
携帯を取り出して電話帳から緑間の名前を探す
大学の時、別れてから1度も連絡を取った覚えはない
きっと変わってるだろうなとは思うが、そのまま通話ボタンを押した
 
「おかけになった番号は現在使われておりません」
 
やはり予想通りのアナウンスが流れた
「だよなぁ…」
「あ…あの…」
不安そうに火神を見上げる緑間の息子(と思われる少年)
「あ、あぁごめんな。オレは火神だ。君のお父さんの…えーと…あー…友達!昔の友達だから安心しな」
屈んで緑間の息子の頭を撫でるとちょっと安心したのか少し笑って「はい」と返事してきた
「とりあえず迷子センターだな…」
緑間の息子の手を握って、迷子センターへ向う火神一向
反対側の手は来我がずっと握っていたようで我が息子ながら抜け目ないと思った火神であった
 
迷子センターに行くまでの間、緑間の息子が緊張しないようになのか、自分がしゃべりたいだけなのかわからないが、ずっと来我が話しかけていた
今、見ている漫画の話や、学校で流行っているもの、日本のアニメはアメリカでも人気だ何だと
緑間の息子も始めこそ質問攻めに戸惑っていたがだんだん慣れてきたのかスムーズに答えるようになっていた
こどもは仲良くなるのが本当に早い
「お、あったあった」
迷子センターを見つけて中に入る
「あの、すみません迷子…」
「すみません!息子とはぐれてしまい…!」
火神とほぼ同着で隣のカウンターに駆け込んできた男がいた
「「え…」」
「…お父さん!」
見やればよく知った顔だった
緑の髪に、黒い縁の眼鏡、特徴的な下まつげの調った顔とよく通る声
緑間真太郎その人だったのだ
お互い固まって動けなくなった火神と緑間
 
運命の再会であった
 
 
 
 
 

 
時間は午後3時すぎ
おやつでも食べようと火神が売店へ行こうと提案する
売店の会計で「迷惑をかけたな」と緑間のおごりとなった
父親が見つかった安堵感からなのか緑間の息子・真大も嬉しそうだ
「あ!ぬいぐるみ!!」
遊園地のマスコットの着ぐるみが売店に現れてその場の子ども達が集まる
2人も例外ではなく着ぐるみに向って走っていった
テーブルに残された火神と緑間
大学時代に別れて以来、1度も連絡を取ったことも会ったこともなかった
お互いもちろん結婚をする時、結婚式の招待状は出した
だが、出席する事はせず、電報だけで済ませていた
相手の幸せを願ってはいたが式場で姿を見る事は憚れたようだ
そんな15年以上長い間会っていなかった2人だ会話に困るのも無理はない
 
「…元気…してたか?」
「…あぁ…」
耐えかねた火神が話をふるが緑間は短い返事を返すだけ
「そか…仕事は何してんだ?」
「…大学病院で外科医をしている…」
「おぉ…すげぇな…」
緑間が何か質問してくれれば続くところなのだが聞かれた事にしか答えないので会話がうまく続かない
「えぇと…いくつだ?」
「え?」
「あの子」
こどもの話になれば何とかなると思って火神は着ぐるみと遊ぶ真大を指差す
「…あぁ…小学2年なのだよ…」
「なら、うちと同じだな…」
ぎこちない大人2人とは対照的に仲良く遊ぶこども2人
来我はさすが火神の息子といった感じで着ぐるみに容赦がない
蹴るは殴るは大変な騒ぎで真大はそれを見て笑っている
恐らく中のスタッフはキレる寸前だっただろう
「お前こそ…仕事は何をしているのだよ…」
ずっと聞かれるままだった緑間が質問をふった
「あー…アメリカの証券会社勤めだ。親が今は日本だからよ…孫の顔見せに帰省中だ」
「…そうか…奥さんは向こうの人なのか?」
アメリカで勤めているという事は、向こうで生活しているのだろう
そういえば、結婚式の場所もハワイだと招待状に書いてあったなと緑間は思い出していた
「あぁ…アメリカ人だ…オレと違って多忙な奴でな…今回は連れてきてねぇんだ…そういうお前は?一緒じゃねぇの?」
火神の妻は実は、人気モデルである。オフが火神と一緒になるのは難しいのだ
妻の事を聞かれた火神の返しは至極普通のことであったのだが緑間の言葉を聞いて、聞かなければよかったと後悔した
 
「…妻は4年前に亡くなったのだよ…」
 
衝撃だった
先立たれていた事にも
その事実を知らされてもいなかった事にも
 
「え、あ、悪い…」
 
そうとしか返せなかった
何をどう言っても苦し紛れの言葉になってしまうような気がして火神はそれ以上何も言わなかった
気まずい沈黙をどうにかしようと火神は明日、黒子達と飲む事を話したが返ってきたのはいい返事ではなかった
「いや…少し仕事がたてこんでいてな…すまない」
「そ…ぅか…医者って大変そうだもんな…」
日曜の夜と言えど、医者である緑間には約束できる保障はなかった
「…た…かおも来るからさ!もし来れそうだったら連絡くれよ」
そう言って携帯を取り出す
新しい連絡先を聞き出すチャンスだ
一瞬戸惑う緑間だが、断るのもどうかと思い携帯を出した
赤外線通信をしてお互いの連絡先を交換する
 
「父さん!飴もらった!」
元気いっぱいに息子2人が戻ってきた
時計を見て緑間がかばんを掴む
「じゃぁ…オレ達は車なのでな…渋滞する前に帰るとするのだよ」
「おぅ…またな…」
「…あぁ…」
帰るという緑間にまた会いたいの意をこめて「またな」と言った火神だったがそれに気付いた緑間は「また」とは返さなかった
「さぁ、そろそろ帰るのだよ…ご挨拶して」
「あ、はい…今日はありがとうございました」
背中を緑間に押され、真大はお礼を言う
「いいえ、どうしたしまして」
そのまま頭を撫でる火神
「ほら、お前も緑間に挨拶しろ」
言われて飴を舐めようとしていた来我が緑間の前に立つ
「おやつ、ごちそうさまでした!」
「いいや…こちらこそ息子を見つけてくれてどうもありがとう」
微笑んで「ではな」と歩き出す緑間
その微笑みは昔とかわらずちょっと照れくさそうだった
火神達が気になるのか、真大は振り返って大きく手を振っている
少し距離が離れたところで来我が走り出した
「待って!!」
呼び止めてポケットからおもちゃの指輪とチェーンを出して真大の手に乗せる
「これ、友達の印。やるよ」
「あ…ありがとう…大事にするね」
「おう」
突然手渡しされたので驚いてはいたが、嬉しいのか返す事はせずポケットへしまった
「…ありがとう」
来我の頭を撫でる緑間
「おじさんの分なくてごめんな!」
別に欲しがる態度は取ってないのに見当違いな事を言うあたり火神の息子である
渡すだけ渡して火神も元へ走って戻っていった
それを遠くから見ていた火神
戻ってきた来我の満足そうな顔を見て血は争そえねぇなぁと思って来我の頭を勢いよく撫でる
「我が息子ながらやるじゃねぇか!」
「ちょっ、何がだよ!やめろよ!」
何に対して褒められているのかわからない来我は、火神の大きな手を必死ではらおうとしていた
 
「…もらった…」
「よかったな…」
「…うん!」
ポケットから指輪を出してそれを見つめる真大はとても嬉しそうだ
だがそんな息子とは対照的に緑間は気持ちは複雑だった
 
 
 
 
 

 
次の日、飲みに集まったのは黒子、黄瀬、青峰、高尾、そして火神の5人だった
紫原と赤司にも声をかけていたのだが、仕事の都合で今回は無理だと返答がきていた
昨日、緑間と遊園地で会った事を皆に話す火神
「いやーびっくりしたよ本当…15年以上あってなかったからよ…」
「つか、遊園地とかそんな広い場所で会うとか、運命じゃねー?」
お酒が若干まわっているのか上機嫌で高尾が火神に絡む
「あ!そーだ…知ってっか?火神君よ~」
「何がだ?」
「真ちゃんの息子の名前~」
「?」
そういえば、遊園地では1度も息子の名前を呼んでいなかったなと今さら気付く
高尾はジョッキを片手に火神の肩に手を乗せて勢いよくビールを飲む
「真大君って言ってなー?真ちゃんの「真」にお前の大我の「大」って書いて「まひろ」って読むんだぜー?」
「おい、待てよ。それ、オレの大輝の「大」だろーが!」
正面に座っている青峰が割って入ってくる
「ぶゎっはははははは勘違い乙!!」
「そうなんですか?」
「へぇ、それは初耳っスね~」
「あれ?皆、知らなかったの?ヤッベー言っちゃまずかったかもー!ま、いっかー!」
皆が初耳だというので若干焦った高尾だが、残ったビールを飲んで誤魔化した
火神にしてみれば、まさか自分の名前の一文字が使われているなど思いもせず複雑な気持ちだった
緑間はそこまで自分を思っていてくれたのか、と
「でさー笑えるのがさー」
お酒が入って上機嫌な高尾は緑間の暴露をはじめる
「名前もそうだけど、嫁さんに「どうしてこの字なの?」って聞かれて真ちゃんバカだからさー「初恋の人の一文字なのだよ」とか言ったんだってよー!ありえねーっしょ?あ、お姉さん、生中おかわり!」
空になったジョッキを掲げて、フロアの女の子に声をかける
何となくその現場が脳内で再生されて火神の口元が緩む
「でも、よく反対されなかったっスね~普通嫌がらないっスかね?」
黄瀬がカクテルを飲みながら続ける
「まー…嫁さんも天然だったかんなー」
ずいぶん迷惑かけられたぜーと苦笑しながらつまみの枝豆をつまむ高尾
「なぁ…緑間と奥さんてよ…」
全く緑間の結婚生活を知らない火神には気になった
緑間は本当にその彼女を愛して結婚したのだろうか?自分のせいで嫌な思いはしなかっただろうか?と。
「んー?なぁに心配そうな顔してしてんの?火神くーん」
そんな火神を茶化すように高尾が火神のコップに焼酎を追加する
「いや…だってよ…」
「ふふっ…ご心配なく。お2人は恋愛結婚ですよ」
「そうなのか?」
「えぇ」
さすが元・相棒といったところか。黒子は火神が気になっている事の答えを述べた
「あー何か、緑間が研修中、相手は新人ナースだったんだと。それで仕事の話とか、いろいろ世話やいてもらったんだと…年上ナースにお世話とか…AVだろ」
「青峰っち、げっひーん☆」
青峰が心底羨ましい!と言いいながら勢いよくビールを飲み干す
それを横目で見ながら黄瀬が笑う
その話を聞いてホっとしたように火神はつまみに箸をのばしはじめた
「ちゃんと愛していないと結婚なんてできませんし、真大君だって産まれませんよ…そもそも緑間君のあの性格です。中途半端な気持ちで人の人生に踏み込んだりしませんよ」
それは君が1番よくわかってるんじゃないですか?と黒子に言われ確かにと納得する火神
「まぁ…名前に使うくらいには未練はあったんだろうけどな…オレの名前使うとか…本当素直じゃねぇなぁまったくよー」
「だからお前じゃねっつの!」
気持ち悪い笑い方をする青峰に高尾が容赦ない突っ込みを入れる
「うっせバカ尾!」
「何だとバカ峰!?」
「あーもー2人共やめるっスよ!ちょっと黒子っちも笑ってないで止めてほしいんスけど!?」
箸で漬物を相手の皿に乗せたり、醤油で浸したり、変な嫌がらせをしだす高尾と青峰を仲裁する黄瀬
そんな光景が懐かしくて笑える
この場に緑間がいれば「馬鹿な事をするな!こどもじゃあるまいし!」と一喝していただろう
いない人物の事が気になり携帯を見るが特に誰からも連絡はきていなかった
 
(やっぱ無理か…)
 
大人しく携帯をポケットにしまった
 
 
 
 
 

 
そのあと飲み会は自分の子自慢で盛り上がり、お開きとなった
独身の黄瀬と青峰は「父親って皆こんなになるのか?」と親バカ3人に冷たい視線を送っていた
店の前で高尾と黒子と別れ、駅で黄瀬と別れ、青峰と火神が一緒の方向となった
他愛もない話をしながら帰るが火神にはどうしても気になる事があった
「なぁ…緑間の奥さんて何で亡くなったんだ…?」
酒の楽しい席で出す話題ではなかったので黙っていたのだが今、青峰と2人なら話しても平気だろうと踏んだ
「あと、再婚とか考えてねぇのかな…こどもだってまだ小学生だろ?母親の存在はデカいと思うんだけどよ…」
独身のオレに聞かれてもわかんねーよ、というのが青峰の正直な意見だった
自分から話していいかどうか迷ったが、火神と緑間の関係を知っているのでわかる範囲でいいか?と了承を得て青峰は話し始めた
「死んだ原因は事故だよ…轢き逃げ…犯人はオレが必死こいてとッ捕まえたけどな…再婚するかどうかは聞いた事がねーな…」
たばこをふかしながら青峰は夜空を見上げた
「事故って運ばれたのが何のいたずらか緑間が働いてた病院でな…その日、薬学の研究所でも大規模な事故があってな…救命がそっちにさかれちまって、人員不足だったらしくてな…緑間が執刀したらしい…」
「え…それって…」
 
緑間はその日、仕事に追われていた
若手だが外科医としては腕はよく、他の先生からも信頼が厚い
学会で発表する論文を作成したり、その合間にはオペをこなしていた
愛妻弁当をようやく食べれると思ったら、薬学研究所での事故で救命の人員が足りないから手伝ってくれとの依頼が舞い込んできた
しぶしぶ手伝いに出たところに自分の妻が運びこまれてきた
その時の緑間の気持ちを誰がわかっただろうか
 
「実際、執刀したところで助かるような怪我じゃなかったんだと…病院まで持ったのが奇跡だってよ…それでも、緑間は最後の最後まで手を尽くした…あいつなり言うなら「人事を尽くした」って事だろ…よほどの事がなければ無駄な事は絶対にしないって有名な先生なのにって話だ…」
やるせないのか青峰の表情は苦渋を舐めたようだった
「自分の嫁だ…駄目だってわかってたって諦められるわけねぇよな…結局、執刀開始10分で息を引き取ったらしい…」
「…そうか…」
そんな事あったなど知る由もなかった火神は後悔しかできなかった
黒子とは連絡は取っていたけど、そんな話は1度もされなかった
黒子の事だから余計な心配をさせたくなかったから黙っていたのだろう
実際、4年前にそんな事を言われても、アメリカで忙しなく働いていた火神が日本に来るなど不可能だった
「…葬式の時とか…その…奥さんが亡くなってから緑間どんなだった?」
最愛の人を失ったのだ悲しみは相当なものだったに違いない
そんな時に側にいられなかった自分を不甲斐無く思ってしまう火神
「ん?あーどうだったかなー…普通だった気がすんぜ」
新しいタバコに火をつけて煙を吐き出す青峰
「…葬式ん時はずっと真大が泣いてたからな…父親として、嫁が残していった大事な息子だ…悲しむより、辛いと思うより真大を守っていこう、絶対に嫁の分まで愛そうって気持ちの方が強かったんじゃねぇかな…」
父親って強ぇもんだな、と付け足してタバコをふかした
静かな暗闇に、赤い光が浮かぶ
「じゃぁな…オレあっちだから」
「…ぉ、おう…またな」
「おう、また…あ、火神!」
別れて歩き出したところで青峰が呼び止めた
「今度はテメェの嫁、連れてこいよ?モデルなんだろ?いい女紹介してくれって言っとけ!」
煩悩むきだしの青峰に苦笑しながら火神は手だけ振り返した
青峰から聞いた話を頭の中で整理しながら火神は家へと足を進めた
 
本当に父親とは強いものなのだろうか…と
 
 
 
 
 

 
遊園地で連絡先を交換したものの緑間から連絡がくることはなかった
また、火神も連絡はしなかった
アメリカに帰る前日になってようやく火神は緑間にメールをした
 
件名:明日
本文:成田11時発の飛行機でアメリカに帰る
会えてよかった
 
と完結なメールが緑間の元へ届いた
タイミングがいいのか、悪いのか、ちょうど明日は休みをもらっている
見送りに行こうか悩んでいたら真大がふでばこを抱えて部屋にやってきた
「ねぇお父さん…お手紙セットって持ってる?」
「手紙?ある事はあるが…どうするのだよ?」
手紙を書くに決まっているのだが緑間が聞きたいのはそういうことではない
誰宛てに書くのか、何の目的で書くのかが知りたいのだ
引き出しからシンプルな便箋を取り出す
小学2年生が使うにしては大人っぽすぎるがこれ以外ないので仕方がない
「遊園地で会った来我くんにお礼しようと思って…指輪ももらったし…何かあげたいなって…お父さん達友達なんでしょ?」
律儀な子だなぁと関心しつつ時計を見ればもう午後8時すぎ
今から駅前の店に行ったとしても大した物は買えないだろう
「プレゼントか…真大は指輪を貰ったんだったな?」
「うん」
便箋を受け取り、早速手紙を書く真大の横で何かプレゼントできるような物がこの家にあっただろうかと考える緑間
クローゼットを開けて奥から2つお菓子の缶を取り出した
生前の妻の趣味はアクセサリーを作りだった
その道具と材料の入った缶である
缶の中には作り方のメモや小さなガイドブックも入っていた
ガイドブックを見てみれば何とか作れそうなが1つ2つあり、材料も恐らく問題ない
「真大、作ってみるのだよ」
「うん!」
ガイドブックを広げて緑間が材料と道具を選別する
父親と一緒に何か作るのが嬉しいのか一緒に缶から材料を探す真大だったが材料の中に少し不釣合いなアイテムを見つける
「ねぇ、お父さん。これもお母さんが使ってたやつなの?」
「どれだ?」
真大がテーブルに出したのはシンプルだが女の人には明らかに大きいシルバーリングと、チェーン
「…これは…」
そのリングは、緑間が火神から初めてもらったプレゼントだった
誕生日に何をあげればいいか悩んだ挙句、自分と同じものをあげればいいと結論付いた火神が送った物だった
チェーンもついているのは、自分と同じくバスケをする人間だし、ピアノも弾く
指に何かをつける習慣はないからネックレスにできるようにとつけたのだ
別れた当初は思い出を捨てるような気がして捨てられなかったのだが結婚した時にもう大丈夫だと思って捨てたのだった
だが、この缶の中に入っていたという事は妻が捨てたのを拾って取っておいてくれたという事だ
 
「大切な思い出の品でしょう?捨てたら駄目よ」
 
なんて言われている気がして緑間は亡き妻は本当に良妻であったと再認識し、感謝をした
「それ、お父さんの?」
「…あぁ…こんな所にあったのか…」
思い出の品を思わぬところで見つけて嬉しいのか微笑む緑間
「ふぅん…あ、お父さん早く作ろう?ぼく寝る時間になっちゃう」
「あぁ、すまない…じゃあ作ろうか」
「わかった!」
選んだのは腕輪
連結部品をかえれば大きくなっても使えるデザインだ
これなら火神も付けれるだろうか…そんな事を考えながら腕輪作りを始めた
 
完成いたのは10時前
真大が寝る時間は9時なのだが、どうしても自分でちゃんと作りたいと言ったので「今日だけなのだよ」と特別に起きていてよしという事になった
さすがに眠かったのか、完成した後はすぐに眠ってしまった
自分のベッドに寝かせて布団をかけてやる
できあがった腕輪をテーブルの上に置いて、缶を片付け緑間は風呂へとむかった
 
結局、作った腕輪を火神に渡すか渡さないかで悩んでしまい寝たのは朝方だった
 
 
 
 
 

 
翌日、火神からのメールに返信をしていなかった緑間
火神にしてみればまさか見送りに来てくれるなどとは思ってもいなかったので成田空港で素っ頓狂な声をあげてしまった
 
「オレ、あのデッカイのに乗って帰るんだよ」
さすがは男の子。ガラス越しに見える飛行機に興味津々だった
「へぇ…すごいなぁ…あ、何か積んでるね」
「爆弾だ!」
「…それはないと思うよ」
冷静な回答をするあたり、緑間の子だなぁと関心する火神
ベッタリとガラスにへばりつく来我の腕には昨晩、真大が一生懸命作った腕輪がついていた
「あ、手紙と腕輪ありがとうな…こっちに友達いないから嬉しいみたいだ」
「…それはよかったのだよ…真大も喜ぶ」
「おう…」
「…」
やはり会話に困る大人2人
中年2人がベンチの真ん中に2人で黙って座っているのはわりと変な光景である
「あ、見送りもありがとな…つか、返事くらいしろよ!変な声出ただろうが!」
「…来てやったのからいいではないか」
「そういう問題じゃねぇよ!」
「あいかわらずうるさい男だな」
そんなやりとりも懐かしく思うのか緑間は少し嬉しそうに笑っている
「悪かったな…人間、そう性格なんて変わんねぇよ…」
 
お前へも気持ちだって冷めたわけでも変わったわけでもねぇよ
 
そう続けたかったが火神は言葉を飲み込んだ
 
言っても緑間を困らすだけだと思ったから
「火神…これ…昨日、真大と作ったのだよ…」
そう言って腕輪を渡そうとする緑間
結局、朝、「お父さんは火神のおじさんに何もあげないの?」と言われてしまい、真大があげる手前、後にひけなくなってしまったのだ
だが緑間から火神へ手作りのプレゼントは意味深な物になってしまう
偶然再会した昔の恋人への手作りの贈り物どう考えても好意がある
 
お互い、家族はできたが未練はある
緑間に至っては愛した妻はもうこの世にはいない
今、この腕輪を受け取ったらこのまま日本に残りたくなってしまう
アメリカには妻がいる
来我の母親がいるのだ
自分には守るべき家族がある
一家の主として、父親としての責任がある
それは緑間とて同じ
緑間真大の父親であって、もう火神大我の恋人だった緑間真太郎はいないのだ
 
「…悪い…受け取れねぇ…」
「そう…か…そうだな…すまない…」
 
搾り出すような声で火神は断った
 
わかっていた
受け取ってもらえるはずはないと
それでも渡そうとしたのは未練があったから
ここで火神が断ってくれれば諦めがつくのだ
 
もう緑間真太郎の恋人だった火神大我はいないのだ
 
「…トイレに行ってくるのだよ…まだ時間あるだろう…?」
「…おう…大丈夫だ…」
重い空気の中、緑間は席を立ちトイレに向った
火神もさすがに堪えたのか大きなため息をついた
 
(「これでいいよな…間違って…ないよな」)
 
「なぁ父さん!今度は真大とかがアメリカ来ればいいよね!?」
「ん?お、おぅそうだな」
急に来我に呼ばれ顔をあげる
「家族みんなで来ればいいよ!お母さんとかもさみんなで!うちでバーベキューしよう!あ、海も近いんだよ!」
「っばっ…!!」
最早、遊びにくる前提で話を進める来我に火神は慌てる
真大に母親はいないのだ
「お母さんは…いないんだ…死んじゃったから…」
「え…あ…ごめ…」
知らなかったとは言え、自分の言ってしまった発言に戸惑ってしまう来我
「あ、ううん。ぼくにはいつもお父さんがいてくれるし全然寂しくないから大丈夫。おじいちゃんとおばあちゃんもいるし」
そんな来我を気遣ってなのか真大は笑って大丈夫と言う
「…えらいな真大君は…」
大きな手で真大の頭を撫でる火神
まだ小学2年生なのに気丈な子だな、と関心する
これも緑間のおかげなのだろう
「でも…お父さんには誰もいないから…かわいそう…」
「…お父さんには真大君がいるじゃないか…」
不思議に思って火神が返す
「…ぼくの前だとちゃんとお父さんしないといけないから…だからお父さん…悲しいとか寂しいって絶対言わないんだ…」
 
 
ちゃんとお父さんしないといけないから
 
 
「前にお母さんの写真見て泣いてるの見たんだ…やっぱりお父さんだって悲しいし、寂しいんだって…ねぇ、おじさん…お父さんはぼくがいたら悲しんじゃいけないの?寂しいって言ったら駄目なの?」
 
 
…悲しむより、辛いと思うより真大を守っていこう、絶対に嫁の分まで愛そうって気持ちの方が強かっ
たんじゃねぇかな…
 
 
ガツンと何かで頭を殴られたような衝撃だった
悲しいわけないだろ
辛いわけないだろ
愛する人を失って大丈夫な人間なんていない
 
1人で我慢して
1人で抱えて
感情を押し殺して
 
息子に心配かけまいと必死で耐えて
 
誰かに弱音を吐いたりはしない
誰かに頼ろうとはしない
 
そういう性格なのだ緑間真太郎と言う男は
 
昔からそうだった絶対に頼ろうとしてこなかった
だからこそ、頼られた時は「あぁ認められたんだな」と思った
 
今、この世界であの男の拠り所になれるのは自分だけ
火神大我だけなのだ
 
「…来我、荷物見てろ!!あ、あと、知らない人に付いてくなよ!!」
 
父親らしい事を付け足して火神は緑間を探しに走った
 
 
 
 
 

 
トイレの鏡を見ながら情けない顔をしているな…と嘲笑する緑間
未練を断ち切る為に持っていた腕輪をゴミ箱へ投げ捨てた
 
「…これでいい…これでいいのだよ…」
 
俯いた自分の顔が洗面台に映る
鏡と同じだ
泣きそうで情けない顔をしている
バタバタと大きな足音が近づいてくる
人が来たと思っていつもの無愛想な仮面をかぶる
 
「…っはぁっ…緑間…っ」
「…火神…っ」
息をきらした火神が入ってきた
空港は広い
1番近いトイレに駆け込んだものの緑間の姿はなかった
そして今いるこのトイレは火神が4番目に駆け込んだトイレである
「…んで…こんな遠いとこいんだ…よっ…ありえねー…っはぁっ…」
ありえないのはお前なのだよと言いたい緑間
どうして探しにくるのか
そして、どうして見つかってしまうのか…
息を整える火神だったがゴミ箱に先ほどの腕輪が捨てられているのを見つけて慌てて拾う
「っお前っ…何も捨てる事ねぇだろ!せっかく作ったやつなのに…」
「…オレが持っていてもどうしようもないのだよ…だから捨てた…悪いか…」
火神と目を合わせないで吐き捨てるように言葉をこぼす緑間
「…悪いね…これオレのなんだろ…?」
「受け取らなかったくせによく言うのだよ…」
「…だから…もらうっつーの」
「…っ!?」
火神の言葉に驚いて顔をあげる緑間
視線がぶつかる
「…オレ、やっぱりお前に事好きだし、忘れらんねぇ…」
「…馬…鹿な事を言うな火神…!お前は…お前には守る家族がいるだろう…!」
「わかってるよ!ちゃんと、あいつと来我の事はケリつけるから…だから…!」
「駄目だ!!」
一際大きい声で緑間が反対する
「もうこどもじゃないんだぞ…30後半のいい年した大人だ…!」
苦しそうに緑間が続ける
「お前にはアメリカに愛する妻がいる…お前の帰りを待っているのだよ…」
ゆっくりと足を進める緑間
「来我君の父親として責任があるだろう…わかっている…わかっているから…」
一歩、また一歩と火神の前へ進む
 
「…オレとお前はこれっきりなのだよ…」
 
そう言って触れるだけのキスをした
 
何が起きたのか若干理解できなかった火神
一瞬真っ白になった脳が超高速で事実を解析する
 
何がこれっきりだ
 
何がわかってるだ
 
何がいい年した大人だ
 
「そ…んな泣きそうな顔して何言ってんだよお前…っ!」
「っ…!」
 
腕を掴んで壁に緑間を打ち付ける
緑間の方が火神より身長は高いが、力は火神のほうが強い
昔からギリギリの差で火神が力技で押し切る事はよくあった
 
「オレっに…!オレにはお前の生活を壊す権利はないのだよ!だから…!」
「だから何だよ…」
「だ…から…」
火神の強い眼光は緑間を貫き動きを奪う
掴まれた腕はから熱が広がる
「…とっととアメリカへ…帰っ…っ!」
それ以上は言わせないと火神は己の口で緑間の口を塞ぐ
抗議の声も、呼吸すらも全て飲み込んでいった
 
 
 
 
 

 
「…っはぁっ…っ…はっ…」
緑間が抵抗をやめたので火神は唇を離した
息がうまくできなかったせいか平然とする火神とは対照的に緑間の息は荒い
「…緑間…」
そのまま力の抜けた緑間を火神は抱きしめて囁く
「…アメリカには帰る…全部ケリつけて…絶対日本に戻ってくる…お前を迎えにくるから…待ってろ…」
「…お断りなのだよ…」
 
 
 
 
 
そう言って火神の背中に回された腕
 
 
 
 
 
それは肯定を意味する
 
 
 
 
 
「…お前本当…素直じゃねぇなぁ…」
 
 
 
 
 
相も変わらず素直じゃない緑間に苦笑する火神であった
 
 
 
 
 
「あ、飛行機…行っちゃったね…」
「父さん…何やってんだろ」
ロビーで待ちぼうけの息子2人は飛び立った飛行機をじっと見つめていたそうだ
 
 
 
 
 
終われ
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